2011年5月1日日曜日

脳内ニューヨーク

STORY
ニューヨークに住む劇作家ケイデン・コダード(フィリップ・シーモア・ホフマン)は芸術家の妻アデル(キャサリン・キーナー)と娘のオリーブの3人暮らし。しかしある日アデルが展示会のためにオリーブと共にベルリンへ行ってしまい、そのまま帰ってこなくなる。ケイデンは切符売り場のヘイゼル(サマンサ・モートン)と親しくなるが、結局その後女優のクレア(ミシェル・ウィリアムズ)と結婚する。しかしまたもや上手くいかくなったある日、ケイデンはマッカーサー・フェロー賞を受賞し、その賞金でもう一つのニューヨークを作ることにする。



ぎゃあああ!なんだかものすごい映画をみてしまった。2時間ちょっとの映画なのに、5時間くらい見た感じ。これ、本当に初監督作品?いや、もちろんチャーリー・カウフマンは今まで脚本家としてすばらしい仕事をしてきたわけだけど(エターナルサンシャイン、マルコヴィッチの穴、アダプテーション・・・あこれは微妙かも・・・)、初監督でもうこんなのを作ってもいいの?多分チャーリーはこの先たくさん映画を撮っていくんだと思うんだけど、この作品を超えるっていうのは、すごく難しいことなんじゃないかな。だってこれ、最高だよ!!

なんかこの作品って、ポップなライフエンターテインメント!って紹介されて。るけど、全然そんな感じではないよ!むしろ超ヘビー級シリアスドラマ。もちろんチャーリーらしいクスっとできるシーンはいくつもあるんだけど、でもこれを エンタメと呼ぶには無理がある。わたしは常日頃日本の映画宣伝会社の本当に映画見たの?って感じの糞みたいな宣伝に腹を立てているわけですが、これはその代表例です。後ね、これは人生をやり直す映画じゃないんです。つらい人生をどんどん積み重ねていく映画なんです。所詮人生リセットなんてきかないんですよ。


実はこれ、公開当初に見たんですけど、そのときは孤独というものを強く意識していた時期で、あまりにも感情移入しすぎて途中で涙が止まらなくなって初めて途中退出した映画なんですよね。 ようやく1年越しで見ることが出来ました。あの時最後までみてたらどうだっただろうな・・・。この作品は今までの人生のなかで孤独を味わったことがない人には、難しいかもしれない。でも、一度でも孤独を味わったことがある人はこの映画のいわんとしてることがわかるんじゃないかな。多分自分もこの映画の1/3も理解し切れていないと思う。でも、チャーリーの言う通り、この映画には色々な解釈があっていいんだよね。


この映画には、チャーリーらしい不思議なアイコンがちりばめられてる。例えば家でなにげなく流れてるアニメにケイデンが出ていたり、カウンセラーの足が何故か腫れていたり。おもしろいのが、ヘイゼルが買った家が常に燃えていること。しかも地下に大家の息子が住んでる笑 ヘイゼルは『火事で死にたくないの』なんていいながらその家に住むのが不思議。 でも結局彼女は・・・


一言でいうと、とにかく暗い映画。その中でもっとも悲しいシーンっていうのは、やっぱりケイデンが病に侵されたオリーブのお見舞いに行ったとき。オリーブは母アデルやその恋人マリアから作品だって言われて花のタトゥーを彫らされてストリップみたいなことやらされて、それなのにアデルやマリアからケイデンは最低のホモ野郎で家族を捨てたって吹き込まれてて、ケイデンのことをすごく嫌ってる。ケイデンは事実無根のことを言われて愕然とするけど、それでも今にも死にそうな娘に許してもらいたくて『自分は最低のホモ野郎だ』って言ったんだけど、結局『ごめんなさい、やっぱり許せない』ってオリーブが泣きながら言ったとたん、死んでしまったところ。つらすぎる!だってケイデンはホモでもないし、どちらかというと捨てられた方なのに。 娘が裸でしゃぼん玉吹いてるショーを見て、『そんな目で俺を見るな』って泣きながら叫ぶシーンも悲しかった。


ケイデン役のフィリップ・シーモア・ホフマンはまさにはまり役。中年の危機って感じ!
この映画は撮影中に脚本を書き加えることが良くあったそうだけど、複雑に絡み合うストーリーの中のそういうライブ感はおもしろい。パンフレットをみるに、この映画は役者をふくめスタッフ全員が映画のストーリーを考えていて相当おもしろい現場だったんだろうな。

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